高齢者の睡眠薬による治療 その注意点
不眠症の治療では睡眠薬の服用は大変有効ですが、高齢者の場合は少し注意が必要です。
高齢者で不眠を訴えて医療機関を受診する人は年々増加の傾向にあるといわれていますが、若い人でも睡眠薬の服用には注意が必要なのですから、高齢なら場合はなおさらです。
高齢者の不眠症の特徴。「早朝覚醒」が多い
不眠には、入眠障害、熟眠障害、早朝覚醒、中途覚醒などの種類がありますが、高齢者に多いのは「早朝覚醒」です。
よく歳をとると早起きになると言われますが、それが顕著に現れる症状です。
本人が朝早く目が覚めることを「早起き」と認識し、快適な1日を過ごしているのであれば、問題はないのですが、「辛い」「もっと寝たいのに眠れない」という場合は、不眠症かもしれません。
そして、生理的老化に伴う夜中の頻尿が「中途覚醒」を招くこともあります。夜中に何度も目が覚めるため、しっかりと眠った気がしないのが特徴です。
心配な副作用と睡眠薬の種類
高齢者が睡眠薬を服用した時に最も懸念される副作用は、「持ち越し効果」です。
これは、翌日、目が覚めた時、眠気が残ったり、起きてからふらついたりするもので、睡眠薬の効果がまだ続いていることで起こります。
特に足元のふらつきは、転倒を招くことから、大変危険です。持と越し効果が起こりやすいのは、長時間型の睡眠薬です。
また、「健忘」にも注意が必要です。健忘は、薬を服用して効果が現れてからの行動を覚えていないという症状です。健忘が起こりやすいのは、超短期型または短期型です。
高齢者に副作用(持ち越し効果)が多い理由
高齢者に持ち越し効果が多く見られる理由としては、歳をとるとどうしても若い人に比べて代謝が低下するため、体内に入ってきた睡眠薬を分解するスピードが遅くなるからです。
服用した薬剤の成分はいずれ尿となって体外に排出されますが、高齢者の場合、いつまでも体内に残ったままとなってしまうのです。
そのため、多くの場合、表記されている効果持続時間より長く睡眠作用が続きますので、思った以上に起きてからもふらつきや眠気を感じるようです。
高齢者に適した睡眠薬
高齢者の不眠症の治療では、できるだけ副作用が少ないタイプを選ぶことが大切です。
いくつかある睡眠薬の成分の中でも「非ベンゾジアゼピン系」のものは、副作用が低く、安全性が高いことで注目されています。
持ち越し効果が出にくく、ふらつきや転倒を防ぐことができるため、医療機関でも高齢者に睡眠薬を処方する時はこのタイプが多いようです。
また、通常、早期覚醒の不眠症の治療では、長く効果が続く長時間型が処方されますが、高齢者の場合は、短期型、中間型でも十分効果の持続が期待できます。
高齢者の不眠治療と注意点
薬の効き方には個人差があるため、高齢者だからといって長時間型の睡眠薬が全く使えないわけではありません。
そのため、医師は様子を見ながら処方を変えていくようです。
患者は副作用について、何らかの症状が見られた時には速やかに医師に伝え、薬の量を減らしてもらったり、種類を変えてもらったりと臨機応変に対応してもらうことが大切です。
また、生活習慣の見直しも重要です。適度な運動や散歩などで水分循環を促し、夜間頻尿を改善したり、朝、しっかりと太陽の光を浴びて体内時計のリズムを調整すること。
さらには、夜、しっかり眠れないことから日中に眠気を感じ、昼寝をする高齢者が多いようですが、これは夜の睡眠に影響するため、あまりおすすめできません。特に夕方の昼寝はNGです。